はずれスライムのつぶやき

どうでもいいことについて適当に考察していきます

ヘミングウェイと学ぶ英語

 

[音声DL] ヘミングウェイで学ぶ英文法

[音声DL] ヘミングウェイで学ぶ英文法

 

 

が売れているらしい。

 

まるで古寺のように書店を巡礼する僕にとって、何となく気になってはいたものの、

 

一般向けの英語本より、未だに受験参考書の棚に足を伸ばす僕はとりあえず心のブックマークにこそっと入れる程度で何ヶ月かを過ごした。

 

しかし、

英文解体新書: 構造と論理を読み解く英文解釈

英文解体新書: 構造と論理を読み解く英文解釈

 

 

これを手に取って心を奪われた僕は、結局二冊をレジに持って行くことになったのだった。

 

英文解体新書の序文には執筆動機の一つに伊藤和夫先生の『英文解釈教室』のように英文を読み解くための思考プロセスを重視したとあります。

 

実際、解説文には頭の働かせ方(文構造の把握の仕方)が伊藤先生の口調に近く、懐かしささえ覚えます。

 

伊藤先生については、以前に書いたこちらのブログに譲るとして、

 

ktfield.hatenadiary.com

 

この二冊は一言でいえば、王道中の王道という本であり、一般受けしにくい学参でありながら、想定している読者は大人という、かつて受験生だったあなたへ、の要素を多分に含む贅沢な本だと思います。

 

僕がイメージする一般向けの本と言えば、もっとお気楽な内容の視覚的にもカラフルで雑学に近いようなものが多いように思います。

 

ところが、例えば英文解体新書は現役学生もビックリな難易度の英文が後半に従って増えていきます。

 

また、解説文もポイントだけを簡潔に記し、むしろ例題の多さに重きを置いて何とか2200円に抑えた感があります。

 

ヘミングウェイの方は、一見すると中学校の英語テキストのような平易な文章が並びますが、その分英文法や語彙の解釈の大切さが解かれ、違った味わいがあります。

 

この二冊が売れているという事が僕は何より嬉しいし、きっとこれを購入した大半の人達が同じ思いではないかと思います。

 

問題の一例に

It was raininnig. The rain dripped from the palm trees. Water stood in pools on the gravel paths.

文中のstoodの意味を問うものがありますが、これを何も考えず真っ先に辞書を引く人や手持ちの辞書に載ってないからと諦める人、あるいは逆に載っているからと安心する人は楽しく読めないと思います。

 

僕は流暢に話せるより、英文を読める方に惹かれるので少し変わっている方かもしれません。

 

じっくりと大人の趣味として読める本がまた増えたなというのが率直な感想です。

 

夏休みも終わりにさしかかり、受験生にとっては他の参考書や問題集の方が効率がいい事は否定しませんが、今回この本を読みながら、久々に購入した参考書があります。

 

それは、

大学入試英文法のナビゲーター 上 (研究社ナビゲーター・シリーズ)

大学入試英文法のナビゲーター 上 (研究社ナビゲーター・シリーズ)

 
大学入試英文法のナビゲーター 下 (研究社ナビゲーター・シリーズ)

大学入試英文法のナビゲーター 下 (研究社ナビゲーター・シリーズ)

 

 

やっぱり伊藤和夫かい!と言われそうですが、むしろ未だにこれがロングセラーとして棚に並んでいることにビックリ。

 

と言っても、受験生当時にはまだこの本は世に出ていなかったので今回読むのは初めてです。

 

この本の底本は旺文社のラジオ講座が基本となっており、一本調子の講義を聞いてもちんぷんかんぷんだった事を思い出します。

 

しかし、こうして文章を読むながら脳内再生すると、何と論理的で簡潔、しかも優しい人柄と品格を感じる名著だろうと思います。

 

伊藤先生の参考書や問題集のスゴイ点を一つだけ挙げるとすれば、圧倒的なクロスリファレンスでしょう。

 

今ならリンク機能でいろんな情報が簡単に手に入りますが、紙面でのその充実ぶりはエモい。

 

一つの解説を読むだけで関連する情報がゲームブックのように(この表現すら今の子には通じまい)ザッピングしていくその凄さは実際に使ってみないと分かりません。

 

そして、これだけ充実した内容を作るのにどれだけの労力がかかったのだろうかとページをめくる手が重くなります。

 

まぁ、だからベストセラーに君臨するわけですが。

 

ただ、最近の入試はかつてに比べ、なるべく平易な英文を大量に読ませ、自分の言いたい事が書けるものを重視していると聞きます。

 

民間の資格試験を採用するかで物議が醸し出されているのも目にします。

 

でも、言葉を操る規則には普遍のものがあります。もし無いのであれば、大勢の人が意思の疎通を行うことは困難なはずです。

 

今書いている文章が単語だけ羅列し、しかも順番もバラバラであったなら暗号です。

 

私は犬を見た

 

私 犬 見た

 

犬 私 見た

 

見た 犬 私

 

これらを文章として感じられるのは助詞の力であり、文法の力です。

 

しかし、

 

犬が 私を 見た

 

としたらどうでしょう?

 

夏目漱石のような小説になってしまいます。

 

さらにすすめて、

 

犬へ 私の 見た

 

では意味不明の文章になってしまいます。

 

この二冊は、自分に足りないものは何か、何を学べばいいかの指針になるため下手な参考書よりオススメです。

 

ちなみにこの二冊とは伊藤先生の本を指すのではありません。もしそう読んでしまった人がいたら現代文の勉強もオススメします。

 

えっ?僕の方ですか?

 

うん、そうかもしれない。

 

だから勉強しますw

 

ヘミングウェイの方は第二弾が出る予定。英文解体の先生も例文集めが楽しいとツイートされていますので、また素敵な本を執筆されると思います。

 

誠実に文章に向き合って作られた本が売れるという事はいいものです。