はずれスライムのつぶやき

どうでもいいことについて適当に考察していきます

進撃の巨人27巻

 

 

本日発売の最新刊。

 

前回話したように僕はしばらく読んでいなかったおかげで、まとめて読んだ分密度の濃さに浸れた。

 

ここでは現在進行中の傑作に敬意を表してネタバレはしない。だから、この作品の面白さを拙い語彙で抽象的に表現していこう。

 

初めてこの漫画を読んだ時は、世間で騒がれた頃で確か5巻くらい刊行されていたと思う。

 

第一印象は多くの人と同じく、絵が汚いだ(笑)

 

主要人物のキャラの作画がコマごとに変わり、数ヶ月ぶりに出会う親戚の子どものようにおぼろげな輪郭しか捉えられず、まるで小説を読んでキャラのイメージを造形するようにセリフや服装から、この人はAでこの子はBみたいな読み方をしていた。

 

まぁ、それは今でも新キャラが出てくると作画力が上がっているとは言え、似たような状況ではある。

 

けれども、そんな事はさておき、名ゼリフの数々やとんでもないストーリー展開に惹きつけられていった。

 

当初の印象は、謎が徐々に明かされていく展開から、これは開けても開けても小さなマトリョーカが出てくる作品だと思っていた。

 

つまり、もうこれ以上は小さすぎて中にはマトリョーシカが入らないだろうと訝しながら読んでいて、まだ入る?えーもっと?みたいな驚きの連続だった。

 

しかし、物語も(おそらく)終盤に差し迫っている現在においての印象は、むしろ今自分が見ているマトリョーシカにさらに大きなサイズの物がかぶせられていくような、何層も重ねられていくミルフィーユの断面を少しずつ梯子に登ってみているような感じに近い。

 

そして、物語が完結した時、僕はそのマトリョーシカをたまねぎの皮のようにゆっくりと楽しみながら剥いていき、自分流のスープにじっくりことことと煮込んでいくのではないかと想像する。

 

もしタイムマシーンがあったとして、その頃の僕に現在の27巻を見せても、それが同じタイトルの漫画であるとは信じてもらえないくらい物語は全く違う様相である。

 

始めは未知の巨大生物である巨人と我々人類が闘う、アリと象のバトル漫画でしかなかったのに、今や世界大戦のようなバトルになろうとは思いもしなかった。

 

もっとも大筋は間違いなく決めてあったのだろう。

 

でもそれだけでは説明がつかないくらい細かい伏線が見事に回収され、緻密な物語が紡がれていく。

 

マトリョーシカはとてつもなく巨大であり、その中に入っているそれは一つの柄ではなく、何体もの表情豊かな物がゴロゴロ入っているのだと気付いた時、もうこの作品は漫画界に対しても進撃であり、巨人であるのだ。

 

多少懸念するとすれば、理屈っぽいというところだろうか。だから、僕はしばらく読まない時期があった。単行本派の僕にとって、何ヶ月の周期で読む新刊は読み返さないと理解ができないほど濃かったからだ。

 

きっと、単なる巨人とのファンタジーバトルを期待した人は途中で離脱しているだろう。

 

でも、そんな人にもう一度かける声があるとするなら、この物語が内含しているものは異常に広いだ。

 

友情、戦争、政治、差別、アクション、ミステリー、激熱なセリフ、巧みな人物造形、そしてどんでん返しにつぐどんでん返し。

 

傑作って、読みながらこれ間違いなく歴史に残るなと予感させるものだが、まぁわりと見間違いだなと思うことも多い。

 

でも、この作品はどういう結末であっても、すでにこの時点で傑作としか言わざるを得ない凄みがある。

 

さらにアニメでは超美麗な画質でそれを補完していくのだから、原作を読みながらもどういう風に見せてくれるのかワクワクが止まらない。もちろん傑作アニメとして後々語り継がれる事も間違いないだろう。

 

情熱大陸のインタビューでは他の作品を描く構想もあるとの事だが、正直ここまでのものを見せられると全く別のギャグ漫画(巻末付録にあるおまけみたいな)でも無い限り、ハードルが高すぎる。

 

ただ、ここまでまざまざと才能を見せつけられるともしやという期待は膨らみ、まだ見ぬ新作へ妄想の翼をはためかせるのもファンというものだろう。

 

今回も、そして毎回、やっぱり続きが気になる作品であった。

 

タイムマシーンがあったらもっと他の事に使いたいけど。