電子書籍の功罪
電子書籍はとても便利だ。
読みたい本を見つけた瞬間、ワンクリックでいつでもどこでも購入する事ができる。
そしていくら買っても重さは変わらない。
重いのは端末かスマホか、それだけだ。
でも、だからこそ、重みを感じない。
まるでダウンロードした音楽のようにどんどんリスト化され、下の方におりていく。
音楽なら流して聞く事もできるが、たとえオーディオブックだとしても集中する時間が必要だ。
結果、気づけばとんでもない量の本が積ん読状態になる。
デジタルならではの検索やハイライトだけの抜粋、メモは確かに便利だ。資料としては使いやすい。
でも、次の章まであと何分と読書スピードまで測定表示されると苦笑い。
ページの厚みに慣らされた世代にとっては相入れないものがある。
何かの本に書いてあったけど、パラパラ飛ばし読みができないのもデジタルならでは。
やろうと思えばできなくもないけど、ページの厚みで全体のどの辺りか検討をつける世代には、ページバーでは感覚的につかみにくい。
改めてリストを見返すと、40冊くらいになっていた。中には買っていた事さえ忘れている物もある。
さ・ら・に、その中には安さゆえにクリックした全集もいくつか。
そりゃ夏目漱石や江戸川乱歩、芥川に太宰が数百円だったら買わなきゃ損な気分になるのは仕方ないけど、すでに一生読めないだけの分量がたったの一項目で収まってるなんて、おそるべし電子書籍。
膨大な量の電子辞書を持ってるだけで安心する庶民心。
そこへ行くと、質量が伴う書籍は本棚の制約もあるし、何より目に入る場所に置けば、罪悪感に駆られ読もうという気になります。
また時々、整理する事で頭の中まで整理されていくような感覚にもなります。
辞書に関してもスマホにいくつか入れてはいますが、ピンポイントで探したい時はともかく、やっぱり紙の辞書の方が散歩道があって楽しい。
思わぬ同音異義語に立ち止まり、そこから想起される言葉を調べ、浮気していく感覚が何とも至福の時間(笑)
電子書籍は似た内容の本は提案してくれるけれど、全くの異分野になるとまるでダメ。
巨大な本棚を歩く時のワクワク感はそこにはありません。
デジタルグッズを使い倒す佐藤優さんも電子書籍はあくまで気に入った本を二度買いする時に使うそうです。
僕は漫画に関してはかさ張るので、iPadProで雑誌サイズで読みますが、これはいいなという本は書籍で購入するし、電子書籍で気に入った物も本として持ちたくなる方です。
一長一短ですが、装丁や紙質、字体も本を楽しむ要素の一つだと思います。
電子書籍の使い方として、僕なりに考えたのは、気になったらとにかく無料サンプルをダウンロードしておく方法です。
とりあえずダウンロードしておけば、読書リストに登録されるので、意識下に置いて本棚を眺めているのと同じ効果があると思います。
あと、いろんな方が紹介されている読書術に目次から内容を推測して読むというのがあり、幸いサンプルは最低でも目次までは読めるので、各章の見出しに興味が湧くかどうかで、自分にとっての良書となり得るか判断できます。
さらに気になれば、実際の書店に行って内容を確かめる事もできます。
マンガは立ち読みできませんが、なぜか書籍は立ち読みできるという利点を活かして、電子版がいいか、実際に本として持ちたいか決めればいいと思います。
森博嗣さんがブログ本で、そのうち本屋は業務用の製本機が置かれ、ユーザーの好みに合わせた書体や装丁で売るような販売形態に変わるのでは?とおっしゃっていたけど、確かにそう遠くない気がします。
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